ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

夜ふかし

 昼過ぎに早退する。在宅勤務の日だから、チャットにひとこと書き残してノートパソコンを閉じるだけだ。着替えて横になり、目がさめると妹はすでに寝ている。私は人が帰ってきた物音くらいでは起きない体質だ。だからといって、睡眠の質がつねに高いともかぎらない。毛布が汗に濡れて冷たかった。

 軽微な吐き気と喉のつかえるような感じが、一週間以上つづいている。四六時中というわけではなく、症状は波のごとくあらわれては消える。手を動かして気を紛らすようつとめて、やりすごしていた。今朝はいよいよ、ただ座っている以外のことがなにもできなくなり、電源を切った。合理的な判断をしたと思う。糸が切れる前に、いちどゆるめてやるのだ。私は私の破れやすさと一生つきあってゆくほかない。

 いまごろになって目が冴えてしまう。開けっぱなしの窓から、かすかな風と光が入ってくる。このあたりの夜空は、暗闇と呼ぶにふさわしくない。街明かりを含んだ不透明な大気が、家のなかを青白く照らし、皮膚をゆっくりと撫でつける。夜が好きだ。日を浴びるより生きた心地のする時間だ。夜ふかしとは、昼に失われたうるおいと静けさで、ふたたび胸を満たす儀式である。喉のつかえは取れないが、深い呼吸を取り戻した。