ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

出勤の朝

 いつぶりにか、朝食をとる。戸棚にひとつ残っていたチーズ入りのパンと、常備しているヨーグルト。食いしんぼうのデルフィーヌが目を光らせる。ロレーンは人間たちの活動にはかまわず寝つづけており、そんなところが私にそっくりだと家族は笑う。二匹の額を撫でる。

 七時過ぎにバス停をめざす。吐く息が白い。破れゆく冬を惜しんでいたところだが、朝の大気にはまだ冷たさが残っていたらしい。半年ほど、午後になってようやく家を出る生活を送っていたものだから、呼気の色さえ新しい。欲をいえば、もう少し寒いのが好みだ。次の冬を吸いこむまで生きのびようと思う。この七時というのは、ちょうど前職の最寄駅に到着していたころである。起床と出発が一時間ほど遅くなるだけで、ずいぶん身軽に歩ける。やってゆけそうだ、という気がする。

 働くのも、生きるのも、めんどうくさい。私はしんから怠惰だ。したいことしかしたくない一心で、転職を叶えた。今後とも、寝心地のよい姿勢を探してしきりに寝返りをうつみたいに身をよじって、這いずりまわって、このからだにふさわしい置き場を求める手間だけは惜しむまい。なにをなすかがすべてであるとはいえ、ウェブデザイナーの肩書きを得たことを記しておく。書いてつくる仕事への未練が捨てきれなかったのだと思う。