昼休憩より、社員食堂への新入社員の立ち入りが制限されているはじめの一五分間、および四階分を徒歩で往復する道のりを減じたものが、昼食のために残された持ち時間です。「五分前行動」の原則より算出される事実上の始業時刻までに着席すべく、作業にいそしみます。頭皮から汗をにじませ、湯呑みを二口で空にし、胃のあたりを押さえつけるとき、じつのところ食べるのがきわめて遅い私は、こみ上がるむなしさをのみ下そうとしていつも失敗し、昔を思い出すのです。
食べ物を捨てることに対して、いまだに罪悪感を覚えます。出されたものは戻しかけても平らげる子どもでした。食べ残しても悪びれない人に接しては気分を害しました(この状態を抜け出したのは喜ばしいことです)。ほんの数年前まで、私は小太りでした。肥満にも拒食にも傾かない程度には、からだは丈夫で鈍感でしたから、だれも問題にせず、したがって解決もありえませんでした。しかし当時の私は、「べき」「ねばならない」をのみこみつづけ、それらを病的に太らせていました。
日曜日の夕食に、浅いリム皿に盛りつけられたトマトリゾットを、半時間以上かけて味わいつくし、正面のとけそうに笑う顔を見ました。おいしい、とつぶやくと、安堵のあまり、目もとがむやみに熱くなるのでした。