ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

新生活

 さっきまで、電話口めがけて「私のことは、きのう入学式を終えたばかりの小学生だと思って聞いてほしい」と告げ、新生活なるもののありようを、ことこまかに悪しざまに言い連ねていました。当時の登校から放課までと、現在の出社から定時までの距離とはよく似ており、ともに果てしないのです。

 五時半には布団を這い出なければならないこと。会議室には窓がなく、白い壁や天井は病棟を思わせること。食事の時間は休息というより作業じみた速度で過ぎること。役員のなかには、プライバシーおよびジェンダー観が世紀末あたりで枯死したと見受けられる人もあること(職場における男女平等とは、自身が男であるとか女であるとかいった、業務とはまるで無関係の規定をすっかり忘れて働けることであって、「女性の活躍」などと声高に叫ぶ人々はこの反対めがけて奔走していることになります。しかも、私は宇宙人ですからこの二分法自体を採用していません)。

 会社のいやなところに内定先の特色と呼べるものはとくにないから、つまり私はどこへゆこうとだめに違いなく、そのなかではいちばんましなところに入ったという感触もある、と力なくつづけると、えらいよ、と返事があり、それは私の明日を養うことばでした。