あなたに対する、ありったけの侮蔑、拒絶、退屈の意をこめて、これを書いています。私のいう「ふつうのいい人」の定義をおさらいしましょうか。他人の「あたりまえのしあわせ」を願ったり祝ったりするけれど、その尺度がきわめて私的かつ流動的であることには思いいたらないあなた。すべての人間が、異性とつがいになり子をなしたがっている、とか、学生時代や家庭にまつわるうつくしい思い出を抱きしめている、とか、信じこんでいるあなた。『悪人礼賛』をご存じですか。私もあんなふうに、文法なきものをひどくきらっています。
悲しくもほだされやすい私ですから、その場では違ったしぐさを見せましたが、不愉快なできごとに遭ったさいには、全員から顰蹙を買おうと席を立つのがよろしい、といま結論しました。私が孤立する将来を案じ、礼儀と正解を説きますか。しかし、あなたからすれば認めがたい、まともではない人間たちが、私を愛してやみません。あなたは私ひとりが去ったところでかゆくもないでしょう。私とあなたがたとの関係とて同じことです。
むろん、好まざる場所に身を置くせいで、いわれなき指図を受け、ひどく疲れるのは、まったくもって私の責任です。そろそろおいとましましょう。自他未分の、幼児のごときかわいいあなた、ごきげんよう。