他人を評価するさい、その人の自己評価を加味するというやりかたが世間では主流らしく、たとえばここ日本では「あの子、自分のことかわいいと思っていない?」が手厳しい批判になりえます。また、近頃は風向きが変わりつつあって、「自信に満ちた人はうつくしい」「自分をかわいがろう」ということにもなっています。後者のほうが小気味よく感じられないこともありませんけれど、いずれもしくみとしては同じことで、自身が相手をどう思うかという感覚に〈その相手が相手自身をどう思っているか〉が組み込まれている、といえましょう。
「自分のかわいさに無自覚な人がかわいい」とか、「自分をとびきりかわいいと思っている人がかわいい」とか、自己評価に対する評価をいろいろと聞いてきました。どれがよいとも悪いとも、私はとくに思いません。自己評価が不当に低いと見受けられる人の、自己愛を傷つけられた経緯を知って悲しんだことはありますが、評価の(私からみれば)不当な低さそのものについては「私とは趣味が合わないな」とおもしろがるだけです。
「わきまえよ」はもちろんのこと、「自信を持て」も、不遜ないわれなき指図であって、胸を張ろうと背を曲げようとすべてはその人の勝手です。私はただ私からみてかわいい人を飽かず眺めるのに忙しくしています。