ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

続・夏休みの宿題

 寝坊して急いで来たのがばれないように、息を整えて教室に入り、ドアがまた開かれるのを待つも、先生がお見えになりません。今週の近代文学研究班は、急遽お休みになったのでした。手帳に書かれていないことが起こるのは、このくらいなら歓迎します。雨に降られたり慌てて駅に引き返したりした散歩のほうが、振り返ってみるとおもしろくて気が利いているように思うのと同じことです。盛大に鳴るおなかを押さえながらおしゃべりをして帰ってきただけの午後に、どこかよく生きた感触が残っています。

 先輩と、あとからいらした先生とのあいだで、卒論と修論の二語が何度も行き交います。余裕をもって卒業論文を書き上げた人も、書き上げたものに満足している人もいないと先生がくりかえしました。宿題をやり残したような気持ちがあって、まだ勉強したいと思った人が院に行くのだともおっしゃいました。私はあきらかに宿題が終わりそうにない人間です。それがわかったとき、これからしたいことがいくつも思い浮かんできました。私はこれがやりたかったんだとか、やっぱりこの人が好きだとか、なにげないやりとりのなかでふと確かめただけのことこそ、どうやら私の場合は本心にごく近いらしいのです。

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