ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

2019-07-01から1ヶ月間の記事一覧

アラーム

おかげさまで、淡々と会社に行けるようになりました。もう、いやでいやで、いますぐにでもやめたい、という感じではありません。診察室にて、そのように現状を伝えたところ、淡々とですか、と医師は微妙な笑いかたをした。ほかに言うこともなくて、私も笑っ…

朝食を

先週、吐き気に耐えながら欠勤の連絡をし、心療内科を探したのと同じカフェで、カプチーノとクッキーを平らげてこれを書き出した。午前中に空腹を感じたのも、朝食らしきものを摂ったのも、ずいぶん久しぶりだ。夏休み以来か。早くも最悪の状態は脱したらし…

なんのための治療か

休暇はほんのいっときの解放をもたらすだけだ、と、夏休みを終えて嘆息した。それから「いまの状態のまま、たとえば転職したとしても、そこでまた同じ問題に直面する可能性が高い」と医師に宣告された。すなわち、現在の私には、休職も退職も解決策たりえな…

まじめ

適応障害のことを聞いた母は、納得したというようすで、あなたはまじめで責任感が強いから、と返事をした。すかさず私は反論を試みていた。さっさとやめたいとこぼしてばかりだし、重圧も自己嫌悪も感じていないつもりだけれど、と。そういうことじゃなくて…

投薬

適応障害、軽度のうつ症状、と診断された。その名がいかなる意味をもつか、私に正しく把握するすべはないが、心療内科医がそう言うのだから、そういうことらしい。とにかく会社を休みたいのですが、休むのもこわいです、としどろもどろになりながら、心身に…

自由人

男らしいと言われたことがない、と私の好きな男は言った。そうだろうねと私は返事をした。男らしさなるものを誇示しないこの男を、ものしずかで、やや華奢で、芸術をいつくしむこの人を、私は愛しているから。私も、女らしくないと評された経験のほうが多い…

思うだけ

私は徹底した地球人ぎらいではないから、他人たちについて、他人たちがそうするように、性的魅力を感じたり、心身の不調を心配したり、差別的「冗談」をおもしろがる神経の持ち主であったかと落胆したり、身勝手にもする。ただし、そのことを当人に表明する…

トリップ

休暇に入ってから、おもしろいほど、目つきが違う。青黒いくまは消え、上まぶたのむくみだか腫れだかも引いた。ひさしぶりに全貌を見せた黒目は、こころなしか輝いている。大げさではない。私以上に私の体調を心配する母が「すっきりしたね」と言ったのだか…

海を聴きに

一〇連休に入るのがうれしくて、海を聴きにか、海で眠りにか、退勤後にそのまま出かけた。家族には「海を見てくるから遅くなる」と連絡したが、このあたりのは黒くよどんだ水たまりみたいなもので、観賞には適さない。そもそも私は海がとりたてて好きではな…

私は貧しい

私の家はじゅうぶんに豊かだ。私は、習いごとをいくつも経験し、早いうちに携帯電話を与えられ、毎年のように家族旅行をし、学費を一円も払わずに私立大学を出た。では、この私ひとりではどうか。ひとりで暮らしてゆくとしたら、どうなるか。手取りは二十万…

湯宿にて

温泉施設の食事処にてこれを書いている。はちみつレモンサワーの氷はいまにも溶けきりそうだが、水位はまだ半分を切らない。私は下戸で、飲み残しを引き受けてくれる人は、きょうはない。ひとりで来た。ひとりで食べてもうまいものはうまいと感じる体質なの…

家出

このごろ私の様子がおかしいと母は言った。雰囲気は暗いし、口調はどこかきつい、仕事がつらいのか、と心配そうにしていた。私は、平生の態度について申し訳なく感じていること、仕事はとことん向かないからやめたいこと、いやなところしか見せられないのが…

二三歳の自己分析

一定の場所に一定の時間、拘束されることを私がひどくきらっているのは、思えばいまにはじまった話ではない。アルバイト、通学電車、講義のあいだの空き時間、あらゆる会合の予告なき延長、式と名のつくものすべて、いずれも耐えがたかった。アルバイトは、…

ゆっくりしてね

心因性の故障を引き起こしやすい自身のことを私は「破れやすい」と形容するが、これには直接の起源があり、私の左耳の鼓膜には穴が開いている。幼少期、塞がることを見込んで切開手術を受けたものの、そのまま残った痕だ。大学受験のような強いストレスに晒…

やめる人の話

部署の人々とは親子ほど(と当人たちが好んで言うのだ)も年が離れている場合が多いからか、個人的なことがらを暴かれるという事態には陥ったことがない。権威勾配の存在が考慮されているのを感じる。その点は悪くないが、飲み会には別種の苦痛がつきまとう。…