2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧
体感として、時間はたえずのびちぢみしている。ただし、そのことを、ひいては時間という枠組みの存在を思い出すのは、のびきって停滞しているあいだだけだ。時間のちぢむときは、ちぢんでいることに気づきもしない。そういうわけで、私の日曜日は、たんに速…
給与明細をダウンロードしてひらくと、返ってくるはずのない年金のぶん、ごっそり引かれていた。〈法定控除〉の欄に目をやったまま、「会社をやめたらね、年金払わないんだ」と隣席の同僚に言った。「もうやめるときのこと考えてるの? 早すぎるよ」と笑われ…
自発的に会社をやめることは、結局のところないのだろうな、と思った。歓迎会の最中だった。私は、感じのよい人には簡単にほだされるし、どちらかといえば勉強好きであるし、(実際に責任を全うしているとはいわないが)責任感の稀薄なほうではないから。 悪…
会社をやめたい。勤め先が気に食わないのではない。会社勤めそのものをやめたい。集団生活から、八時間以上に及ぶ拘束から、抜けだしたい。先月になって判明したことだが、私は、あすもあさっても五時半に布団を這い出なければならない、そう考えただけで表…
粉飾の多い弔辞を述べられるのは耐えがたいからしばらく死ぬまい、と決めている。とはいえ、ながらえたいと願うものには死にどきも死にかたも選べないから、実際にしているのは、帰宅したら「今日も弔辞を述べられずに済んだ」と思うことだけだ。 「あっては…
先月のことだった。精神の成長が止まった、とふいに思った。十代のころ、そのうちのいつだったかは記憶にないが、もう身長は一生伸びない、と、なにか明るくしずかに絶望した年があった、あの感じがした。 私は焦った。杞憂にすぎないのかもしれない、あるい…
二三歳になってはじめての夜更けを迎えた。私は連休明けの生まれだ。ついでに、心身ともに丈夫ではなく、なにもしない時間をこよなく愛している。それで誕生日前夜、すなわち出勤前夜は気がめいり、誕生日のことなどすっかり忘れてしまう(もとより日付とい…