ひらログ

おひまつぶしにどうぞ。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

告白

1. 彼に告白をさせたい一心で、私は黙りこくって待っていました。 好きだと言わせたい。この使役の形をとったきわめて受け身な願望は、言質を取りたいという幼い不安にもとづいていました。つまり、告白さえ受ければ、「こんな私でも、あなたのほうから、…

ひとびとよ泣け

これより先、図式を単純化するため、性器の形状のみによって人間を男性と女性とに二分する横暴な書きかたを用いること、ここにあらかじめ記しておきます。 私はかつて男性差別に加担しました。高校の体育の授業では、男子にだけ更衣室が用意されていませんで…

家具店にて

殺人的な真夏が死に、私は夏を生き抜きました。暑いのは早起きより人混みよりだめで、このところ「真夏の死」という小説の題を想起しない日はないほどでした。しかし気温と日照のほかは、例年通りの、事件性に乏しい日々でした。私は海にもビアガーデンにも…

男だったらつきあいたい

恋バナなるものについてゆけない、成長の遅い中学生でした。いちどからかわれてみたくて、試しに「好きな人いるかも」と嘘をついたところ、だれだとお調子者がしつこく尋ねてくれたのですが、いないものは答えられません。むこうもこちらもすぐに飽きてしま…