2018-10-01から1ヶ月間の記事一覧
取り入れないほうが発話全体がかえって端正にととのうような枕詞が現代語には散見され、たとえば「これは偏見にすぎないのだけれど」「これは偏見などではなくて」からはじまることばを私はほとんど聞いていません。そもそも人の言うことのすべては偏見であ…
いちどだけ、必修科目の先生から「あなたはこのクラスでいちばんだ」という旨のメールをいただいたことがあるのですが、私はその科目が好きではありませんでした。巧妙とは言いがたいプロパガンダ以外のなにものでもなかったからです。ふまじめな私は、前方…
いちばん若くてうつくしいときをくれたのだから、学生のころからつきあって結婚した妻のことを責任もって愛しぬくつもりだ、というような発言が美談として取り上げられるのを観測して、やはり私に地球人の謳う愛はなじまないのだとぼんやり思いました。「う…
昨日は女装をして、つまりスカートを穿いて人に会いました。その人の「女装も似合うね」は、私を落ち着かせ、いくぶん得意にしました。私にとって女装とは「どこかむずむずする、ふだんはしないかっこう」です。 私はまぎれもなく女性のからだの持ち主であり…
塾講師のアルバイトをしていると、生徒からも友人からも、「学校の先生になりたくはないの?」とたずねられます。ここで授業をするのは楽しいが、と言い添えつつ、質問には「なりたくはない」と答えます。 そこかしこに人があふれかえっている公立の学校を出…
そらで言えそうなくらい「パルタイ」を読んだというのに、本作を取り上げるつもりの卒業論文ははかどらず、おまけに、倉橋由美子を愛しているのか憎んでいるのか、ますますわからなくなります。倉橋のことばに私は断片的に強く共鳴しますが、そこにはむつみ…
かつて殴ってまで高くしたかった鼻筋や、みにくく見えてしかたなかった腰まわりの肉を、ようやくみずから気に入りはじめた私は、きれいな人にきれいだと言うことへのためらいをとかす、さなかにあります。このこころみは難航をきわめています。抱きしめたい…
内定式を終えると微熱が出ていました。サロメを演じる土屋太鳳を観にゆくのはあきらめて、映画のチケット代は、ブイヤベースの素と早生みかんになりました。アルバイトから帰り、布団にうずもれると、これまでに「きみに会社勤めは向いていない」と言った、…